船を漕ぐ

12月27日晴れ。風模様は凪。

近くにある港に停泊するため、僕はゆっくりと船を漕いでいた。ここからでも港が活気づいているのは見えるけれど、前に立ち寄った港よりは人が減っているように見える。

随分遠くまで漕いできた。いつもは一人で、ときどき一緒に。
アフリカにはこういうときに便利なことわざがあるらしい。一人では早くすすめるが、みんなだと遠くすすめるらしい。

言われてみればなるほどたしかに、一人でいるときのほうが早く、また居心地が良く物事は進む。船が壊れたらすぐ直せばいいし、眠くなけりゃ寝なくても良い。

もちろん一人じゃ進めないときもたくさんある。嵐の日は大変な目に遭う。病気のときも大変だ。一人で何とかできるなら良いけれど、それを前提にできないときはたくさんある。

それなら自分のための小舟は捨てて、みんなで一緒に進んでしまうというのもありかもしれない。僕の愛用の船なんて、ただの無駄な執着でしかないから。けれど一方で、こうも思う。
「できるところまで早く行ったらいいじゃないか」「限界が来たら、その時同じように早くきた人たちが港にいるはずだ」と。

確かに航海は気の遠くなるほど長いものだけれど、一方で途中で舵を切り直せないわけじゃあない。
この海を共有するのは潮風だけ。平等に流れる時間の中、、きっと早く着いた港には、舵を切り直したい同じく早く着いた人がいるはずだから。 それならまだ、もう少し一人で漕いでいてもいいんじゃないか。

そう考えながら、止まる風の中、港へ向けて船を漕いでいく。

次はどんなことがあるだろうか。